子どものいじめの件数は、文部科学省が把握しているだけでも年々増加しており、特に小中学生の件数が多くなっています。小中学生のいじめは、子どもの心の不安定さがいじめにつながったり、クラス形成がうまくいっていないときに起こることが多く、周囲の大人の子どもへの関わり方が、子ども同同士のいじめにつながっていることもあります。

◆年々増加・深刻化している子どものいじめ

〇子どものいじめの実態

深刻ないじめの事件や、芸能人などが自分のいじめの過去を赤裸々に話すなどの機会を最近よくテレビなどで見かけるようになりました。学校が認知している子どものいじめだけで、その数は年間約18万件あると言われています。これは、平成26年度の文部科学省の調査による結果です。

同じ調査では、小学生におけるいじめが3分の2を占めていることも示しています。また、学年別でみたときに一番いじめの件数が多いのが、中学校一年生であり、文部科学省が把握しているだけで、年間約2万6千件ものいじめが報告されています。

これらは、学校側が把握している件数のみであり、実際にいじめを受けて悲しんでいる子どもの数はもっと多いかもしれません。

〇思春期に起こる子どものいじめ

小学校一年生から六年生の年間のいじめの件数は、2万件前後と高い数字になっています。一方、中学校二年生以降は徐々にいじめの数が現状傾向にあり、高校生になるといじめの数は、年間約6千件に減少しています。

これらのことから考えられるように、思春期の子どもたちの間でのいじめが多いことがわかります。

◆いじめを起こす子どもの気持ち

いじめを起こす子どもの気持ちには、様々な背景があります。

〇自分が主体となって人に影響を与えたい

いじめを起こすとき、子どもたちは、「自分が何かの主体になって、注目を浴びたい。」「人に影響を与えたい。」という気持ちを持っています。こういった気持ちは、いじめを起こす子どもだけではなく、全ての子どもや、大人も持っている気持ちです。

自分が何かに対して影響を起こしたいという気持ちから、人間は行動を起こします。それらの気持ちが、正しい方向に向いたときは、子どもなら例えば、学級委員長になってクラスを引っ張ったり、スポーツや勉強の成績で他者の注目を集めたりします。

しかし、そういったことができない場合に、何かの方法で人に与えたいという気持ちがゆがんでしまい、いじめへとつながってしまいます。

〇子どもの心が不安定なとき

また、子どもの心が安定した状況にあるかどうかも、いじめが起きることにつながります。普段から、自分が何かの主体性を持って行動していると感じている子どもは、たとえ一時的にいじめに走ってしまっても、注意され、いけないことだったと気付くことで、いじめをやめます。

しかし、自分の行動にいつも主体性を感じておらず、誰かの意見によっていつも自分の行動が左右されていると感じている子どもは、注意を受けても、簡単にいじめをやめようとはしません。

例えば、通っている習い事が嫌なのに、親に強制されて習っているといった子どもや、家庭内での暴力が日常的な家庭にいる子どもたちは、心身的に不安定であり、その不安な気持ちをぶつけるためにいじめを起こしたりします。

〇仲間意識のゆがみによるいじめ

いじめの加害者は、中心となっていじめている子どもだけのことを指しません。クラスなどの中で、いじめが起きていることを知りながらも傍観する子どもたちも、加害者に含まれます。

この傍観者の中には、いじめをとめたいと思うけれど、自分が止めに入ることで、今度は自分がいじめの被害者にならないかとの不安で傍観者になっている場合と、いじめの様子をおもしろおかしく見ている場合があります。

◆健全なクラス作りがいじめの防止に

仲間意識が健全な場合は、その意識がクラスの一致団結につながります。一致団結しているクラスは、合唱コンクールや体育祭などのクラスで取り組むイベントにクラス全員で一生懸命に取り組み、結果に関わらず、自分たちでやり遂げたということに達成感を持ちます。

しかし、まとまっていないクラスでは、合唱コンクールや体育祭などの行事においても、子どもたちの意識はそれぞれ違う方向に向いてしまいます。

「自分は無関係だし、このクラスのことも興味ない。」「自分はこのクラスであることと、特に何の関係もない。」などと、クラスへの帰属意識が弱い子どもがクラス内に多いとき、そのクラスではいじめやいじめの傍観者が増えがちになります。

小学生や中学生のクラス内掲示に、「一致団結!」などの目標掲示が掲げてあったり、体育祭などの行事において、クラスをあげて取り組もうとしたりするのは、クラスをまとめていじめを防ぐ目的もあります。クラスの担任は、そのようなことも考えながら、クラス形成をしているのです。

そのため、クラス作りが健全なクラスでは、いじめが起きにくく、例え起きたとしても、周囲が傍観者とならずに、クラス全体の雰囲気の解決に向けて数人が動きだすと、それに伴ってクラス全体も動きだし、結果としていじめがなくなるという好循環がうまれます。

◆「いじめ」に対して、子ども自身ができること

いじめを受けることは辛いことですが、もしいじめを受けたとき、自分自身でできることにはどんなことがあるでしょうか。

〇身体を鍛えることで、心も鍛えられる

健全な強い心は、身体から造られます。うつ病を抱えた人が、家に閉じこもってばかりいず、無理のない範囲で、外へ散歩に行くことが身体にも心にも良いとされていたり、多忙を極める会社などでは、朝のラジオ体操などの軽い運動が、会社内で習慣化されていたりします。

気持ちがふさがったときには、つい心も身体もふさぎ込んでしまいがちですが、そのようなときこそ、少し外で身体を動かしてみて、身体と一緒に気持ちも開放してあげてみると、気持ちが少し変化するかもしれません。

いつもとは違う環境に自分の身を置き、スポーツなどを習いに行くのもよいですし、ハイキングなど自然の中で身体を動かすことを体験することも、よいことです。

〇拒絶する勇気と、自分に自信を持つこと

なかなか勇気のいることではありますが、他の子どもたちから、からかわれたり悪口を言われたりしたときに、毅然とした態度をとることも大切です。

なぜならいじめる子どもたちは、自分たちがいじめることによって、落ち込んでいたり悲しんでいたりする様子を見て、自分のストレスを解消したり、自分は人へ影響力を与えているのだと感じ、さらにいじめをエスカレートしていきます。

しかし、いじめた子どもが毅然とした態度で対応したり、それは嫌だからやめてほしいとはっきりと伝えたりすることで、いじめる側の子どもたちは、面白さを感じなくなり、いじめをやめることもあります。

いじめられている相手にはっきりと意見を言うことは、なかなかに勇気のいることですが、自分のことに自信を持ち、毅然とした態度でいることを忘れてはいけません。いじめられるのは、自分がだめだからではなく、いじめている子どもたちの心が弱いからです。

いじめられたからといって、自分のことは責めないでください。

〇誰かに頼ること

いじめられたことを、親や先生などの周囲に、なかなか話せない子どもも多くいます。先述した調査で分かっているいじめの件数以外にも、人に言えずに悩み苦しんでいる子どもたちが多くいるでしょう。

いじめられている子どもたちが、他人にいじめのことを相談できないのは、「いじめられている自分がだめだから。」と自分時自身を否定してしまい、殻に閉じこもってしまう場合と、「大人に話しても解決しないし、むしろ悪化するから。」と大人を信用していない場合があります。

大人は日頃から、「いじめの相談を受けても加害者を刺激しないように解決する」ということを子どもに伝えておくことと、その際の具体的な解決策を大人がしっかりと準備しておくことが大切です。

そして、子どもがいじめについて相談をしてきたときは、まずは子どもの話をじっくり丁寧に聴き、そして焦らずに、加害者を刺激しないように解決するにはどうすることがベストかを考えて解決に向けた行動をとることが大切です。