子どもの心理テストは、小児精神科などにおいて発達障がいをはじめとする障がい全般についての診断を下すときに用いられます。もちろん子どもに行う心理テストですからそれだけでは判断できません。子どもの面接や保護者や先生に対しての家庭、学校などの生活のようすの聞き取りも合わせて行います。ここでは、小児精神科における子どもの心理テストについてご紹介します。
目次
小児精神科における子どもの心理テスト
小児精神科では、小学校低学年の子どもを中心に心理テスト等を実施し、子どもの行動パターンや人間関係(友達関係や親子関係)などを探ります。そして、その子どもの発達段階に応じた問題や保護者が抱える不安や悩みなどを把握して診断を行い、アドバイスを行ったり、時には発達障がいとして診断をしたりします。
一般的な心理テストでは、道具やおもちゃを用いて遊ぶ様子を観察したり、小児精神科などの医師や看護師の出す質問に答えたりするという形で子どもの心理状態を把握します。では、この聞き取りという形で行う心理テストでは、発達障がいやそのグレーゾーンであるかどうかを測ることになります。
・子どもの人間関係の悩みや不安、他人をどう見ているか
・特に秀でたところ、劣るところ
・行動パターンや性格、社会性や年齢に応じた適性
・現在の心理状態
小児精神科で子どもに行う心理テスト
(1)バウムテスト
バウムテストはスイスの心理学者Koch.K.が創り出した心理テストです。投影法の検査で、厳密には投影樹木画法といいます。「1本の実のなる木を描くことでバウムテストの専門家がその時の心理状態を小児精神科医が判断するというものです。このテストでは、テストの意味があまりわからない幼児や小学校低学年の方が検査結果に素直に表れやすくなるという特徴があります。
①バウムテストとは
紙の上に描く1本の木からその全体的な印象や樹木の形や位置、描く時の鉛筆の動きという4つの側面から、その樹木の特徴を見て判断する心理テストです。特徴を見る項目は実に60余りもあります。その項目を分析することによって物の考え方や捉え方、心の内面にあるもの、深層心理などを知る手掛かりとします。これによって、その人(子ども)の家庭や学校への不満、置かれている生活環境などを小児精神科医が読み解くことになります。
②バウムテストの目的
バウムテストの目的は、小児精神科医などが子どもの心理状態を把握するにあたって、心理テストをすることよって子どもの内面を捉えることです。子どもにとっては、「樹木」という身近なものを描くという簡単なものですから心理テストをしていることがわかりにくく正確な結果を得ることができるのです。
(2)子どもの臨床心理アセスメント
子どもの臨床心理アセスメントとは、知能検査をはじめとする心理テストや面談によってその子どもの内面をいろいろな角度から分析し、それぞれの子どもに応じた教育方法を見つけることです。小児精神科でもよく使われる方法で、心理テスト等を実施することによって子どもの特性(発達障がいを見極めにも使われる手法)を把握していきます。
①子どもの臨床心理アセスメントとは
アセスメントは、問題解決において情報をしっかりと集め解決の方法を計画していくことです。小児精神科などでよく使われる手法で、子どもの心理テストだけを行うのではなく、面談や行動観察も合わせて診断します。発達障がいを判断し、子どもの特性の把握とともに一人一人の子どもに応じた診断を下し、親御さんに対して協力を求めるということになります。この手法は小児精神科だけではなく学校や病院などに配置されるスクールカウンセラーも使っている手法です。
②子どもの臨床心理アセスメントの目的
子どもの臨床心理アセスメントの目的は、発達障がいと診断された子ども等に対して最善の教育的支援は何かを医師と親で探ることです。知能テストや心理テスト、発達検査によって子どもの特性を知ることになりますが、子どもの言動に対して、「なぜそういう言動をするのか」ということを考えていくことが重要です。
③子どもの臨床心理アセスメントで行われる心理テスト
発達障がいなどの障がいを判定するために小児精神科等で行われる心理テストには、知能検査や発達検査があります。面談や行動観察だけではわかりにくいことも、この心理テストで判定に至るというケースも多いです。以下、代表的な心理テストをご紹介します。
・ピネー式知能検査
ピネー式知能検査は、幼児期の子どもから大人に至るまで幅広い年齢の人が対象になっています。この心理テストでは、精神年齢(問題の解答数や理解度等)が生活年齢(実年齢)と比べてどうかを算出し判定します。代表的なテストが、田中ピネー知能検査で、問題が年齢尺度によって整理されていますので、通常の発達レベルと比較しやすくなっています。
・ウェクスラー式知能検査
ウェクスラー式知能検査は、個人の言語性IQと動作性IQという測定方法を用いて個人の得意、不得手の測定を行います。年齢に応じて心理テスト内容が違います。個人の能力の特徴を分析して、知能障がいや発達障がいの診断(疑いがある)を下すことになります。
・新版K式発達検査
子どもをはじめとして成人にも用いられる心理テストの一つです。年齢においてできる行動や反応が細かく設定されていて、対象者の行動や反応がそのレベルに達しているかによって、発達障がい等の診断を下します。この心理テストでは「姿勢・運動」「認知・適応」「言語・社会」という3つの領域から発達年齢を評価します。
代表的な心理テスト例をご紹介しましたが、いずれのテストでも、一般的に定められた年齢相応の言動ができているかという評価を行います。この心理テストは、専門医(家)によって用いられている検査が違います。
子どもの心理テストについて小児精神科の取組みを紹介・まとめ
小児精神科を訪れる親子には、切迫した緊張感があります。「うちの子に限って・・・」という思いを持って受診されます。心理テストは、あくまでも今の子どもの状態を知る手立てですから、特に幼児期の子どもはその結果がすべてではありません。ただ、発達障がいなどの障がいについては、早く知って教育方法を専門家に相談することが大切です。また、学校などとの連携も重要で、家庭と学校の信頼関係で子どもはよりよい方向に向かいます。