子ども心理学で、中学生は思春期と呼ばれます。小学校を卒業して中学生になるこの時期は、心も体もより大きく成長しますが、反面子どもの内面は揺れ動く時期に入ります。まず親の存在です。親は「うっとおしい存在」と捉える子どもが増え、友だち依存が強くなっていきます。中学生について子ども心理学からわかることをご紹介します。

中学生を子ども心理学の視点で読み解く

(1)自意識と葛藤に悩む

子どもは小学校高学年の頃から自意識(自分自身についての意識、他者と区別された自分を感じること)を持ち始めます。自分と他人との違いを認識し、優越感や劣等感を強く持ち始めることになります。この優越感や劣等感は、幼少時代から築いてきた能力の差によって感じるものですが、「みんなができているのに自分だけができない」という場面に出会った時には強い劣等感を持ってしまいます。

「葛藤」を学ぶのも子どもが中学生になったときに訪れる心の成長になります。心理学でもこの「葛藤」を学ぶことの大切さが取り上げられ、経験することによって大人に近づきます。「自分は将来どうなっているのだろうか。」「今までミュージシャンに憬れていたけど私にはとても無理だ。」「スマホでゲームばかりしていていいのだろうか。」・・・そういう葛藤が発達段階として非常に大切なのです。

自意識や葛藤を経験して成長する中学生ですから、かなり内にこもった精神状態になることがあります。親としてできることは、子どもを見守るということです。子どもが中学生になる子の時期は、心理学的にも思春期、反抗期の入口です。親はこの時期を子どもに寄り添いながら生活を送ることができれば、子どもの中学生、高校生時代を安心して過ごすことができます。

(2)友人関係を重視する

小学生時代の友人関係が大きく変化するのも中学生の特徴と言えます。子ども心理学では、大人依存から友人依存に変わるのが中学生のこの時期です。「友人が一番」という思いが強くなって親のいうことよりも友人のほうを選ぶ、悩みや不安も親よりも友人に相談するようになります。子ども心理学で「親離れ」の第一段階といわれる時期です。

中学生で非行に走る子どもが多いのもこの影響で、友人同士の話の中で、親に隠れて悪いこととわかっていながらもゲーム感覚で悪行に走る子どもが多いのも特徴と言えます。しかし、一方でお互いが勉学で刺激をしながら良好な友人関係を築き、のびのびと中学生生活を楽しんでいる子どももいます。

親としては、ここでも静かに見守りながら話を聞くようにします。そのコミュニケーションは非常に大切で、親が子どもの言動を受け入れてあげることで、心理学的に親子のコミュニケーションが不足しがちな時期で、受験やクラブ活動で敏感になっている子どもの心の安定につなげることができます。

(3)性意識の高まり

性教育は小学校でも積極的に行われていますが、小学生時代はまだまだ他人事のように感じています。子ども心理学では、中学生になると、性意識が高まり異性への関心が非常に高まる時期です。現在ではインターネットのユーチューブなどで簡単に「性」に関する情報や画像、映像を見ることができますので、子どもは、大人が思っている以上によく知っているともいえます。

親としては、そういう子どもに対して何もしていない(できない)のが現状です。性については、インターネットがここまで普及している社会だから、子どもは疑問に思ったことは自分で解決するだろう、子どもが自然に覚えていくだろうという感覚です。親として心したいことは、子どもの変化を見逃さず「言動が変だな」と思ったときには声かけをすることです。子どもの様子で声かけを躊躇してしまうと、取り返しのつかないことに発展する場合があります。

中学生に身につけさせたい力を子ども心理学の視点で読み解く

(1)人間としての生き方を見つける

中学生は心理学的にみても非常に難しい時期です。ただ、この時期に人間としての正しい生き方を身に付けさせることは非常に重要です。小学生時代から「知・徳・体」の勉強をしてきています。その中では親への感謝や友人への思いやり、地域の方々へとのふれあいなどの道徳的なこともしっかりと学んできています。この「徳」の部分については目に見えて評価されるものではないため、子どもがどう成長しているかが見えにくいです。

しかし、心理学的に見ても子どもは中学生になると感謝や思いやりの気持ちを忘れがちです。それが人間として生きていくにあたって非常に大切なことであることを自覚させる必要があります。親が子どもに感謝や思いやりの気持ちを持たせるためには、子どもの立場で声かけをするようにし、人間としての生き方をその場その場で見つけられるようにしてあげることです。

(2)社会の一員として自立することの重要性を知る

子ども心理学で、中学生のこの時期に「社会の一員になる」という自覚を持たせることの重要性が語られます。中学生にとってはなかなか理解しにくくなぜ重要なことなのかがわかりにくい言葉でもあります。そこで、中学校で取り組まれているのが職業体験です。地域にあるいろいろな企業やお店で実際に働いてみて、仕事というものの厳しさや働くことの大変さ、楽しさを実感するというものです。

子どもはこのような経験で社会の一員とはこういうもの、仕事とはこういうもの、そして、自立して生活をすることにつながることを学びます。親として心がけたいことは、このような体験をした子どもに対して積極的に体験で得たことを聞くことです。そして、親の仕事の話をすることです。子どもは、あらためて親を見直すでしょうし、社会の一員、自立という意味を感じ取ります。

子ども心理学を読み解く・中学生の心理に迫る・まとめ

子ども心理学において、思春期と言われる中学生の時期は問題行動が表出しやすい時期です。現在の社会問題にもなっている不登校やいじめ、そしてそれに伴う自殺などが一番多い時期でもあります。さらには、受験という精神的にもつらさも経験していきます。高校生というより多感な時代を乗り切るためにも、中学生の心理を学んでおくことは親をはじめとして大人に課せられた課題です。