子どもに対する臨床心理士の役割が年々重要になっています。それは、いじめや不登校の問題を抱える子どもが増えている学校現場において、スクールカウンセラーという立場で関わるようになったからです。また、発達障がいと診断される子どもが年々多くなり、そこには臨床心理士の診断という大きな役割も果たしています。

子どもに関わる臨床心理士の役割

臨床心理士は、心に悩みや不安を持つ子どもに対して心理士という立場で診断し解決に導く子ども心理の専門家です。臨床心理士は、教師や医師と同じように人(子ども)に関わりコミュニケーションを使って子どもの心に迫っていきます。子どもをはじめとする多くの人に関わり、子どもや学校、親に影響を与えていく重要な仕事です。

ただ、教師や医者と違うところは、「子どもそれぞれの個性や取り巻く環境、価値観を尊重しながら自己実現を目指すことができるように支援する」というところです。臨床心理士は、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定している資格です。いじめや不登校など多くの問題を抱える学校現場において、自治体によっては、中学校区に一人の「スクールカウンセラー」として臨床心理士を配置しています。さらには、臨床心理士がその専門性を生かして「発達障がい」を診断します。

臨床心理士としていじめや不登校の子どもに関わる

子どものいじめや不登校の問題は、社会の急激な変化(デジタル化やグローバル化)が一因となって、保健室登校や「学校に行きたくなければ図書館でもいい」という風潮になるほど学校や家庭で深刻化しています。子どもの心は、大人になるための準備期間として大きく揺らいでいます。

子どもがいじめにあったり、不登校で学校に行きたがらなくなったりしたときに、まず、学校と家庭でその原因を探ります。しかし、多くの場合該当する子どもにもわからないというのが現状です。「朝お腹が痛くなる」「友だちと話ができない」「あの先生に会いたくない」などという症状によって、親は臨床心理士などの専門家の手を借りることになります。

臨床心理士が行うカウンセリングは、次のような手順で行われます。

1.子どもの生育歴や環境、家庭、学校での様子を本人や周囲の大人から聞くこと

2.学習面(教科の学習への構えや運動能力、音楽や図工などの芸術的センス)を把握する

3.生活面(学校・家庭での友人関係や親子関係、趣味など)を把握する

4.医療機関や相談所などでの診断結果を把握する(他の医療機関との連携を図る)

5.心理検査を行う(必要に応じて心理検査を実施する)

6.検査結果から子どもにとって何が必要か、解決の手順を明らかにする(子ども、家庭、学校、臨床心理士が連携して今後の方針を持つ)

臨床心理士が子どものいじめや不登校に関わる場合に重要なことは、その子どもと親、学校(主として担任)との信頼関係を築くことです。中でもいじめや不登校の問題を抱える子どもは、学校そのものや家庭と学校の関わりという点で、何らかの疑惑(疑念)を持っています。その疑惑は何かを探る(聞き出すのではない)のです。

臨床心理士の子どもの不登校問題解決の事例でこういうケースがあります。子どもがいじめにあって学校に行きたくないと訴えているが、学校はいじめの事実を把握していないというケースです。臨床心理士は、あくまでも子どものいじめや不登校の解決に向けて診断していきますから、学校の言うことを鵜呑みにはしません。その子どもとのさりげないコミュニケーションを進める中で、友だち関係や友だちとの出来事をじっくりと把握していきます。

そこには、親も絡ませます。子どものことをどこまで知っているかということです。生育歴の中で気になる出来事(子どもに直接かかわることではない)があり、それが子どもの人格に影響を与えたという例もあります。このケースでは、その子どもが過剰に友だちの言動を意識しすぎたために、被害妄想的になっていたことが原因でした。しかし、そうさせたのは、家族関係がうまくいっていない家庭の問題が背景にあったのです。

このように、臨床心理士は「子ども第一」という思いを常に持ちながら臨床心理士としてプロ意識を持って学校や家庭に関わる問題に真っ向から取組み解決していくのです。学校では、自治体にもよりますが、臨床心理士をスクールカウンセラーとして常駐させています。子どもの心の悩みの解決のために大きな責任をもって対応しています。

臨床心理士として発達障がいの子どもに関わる

発達障がいは、自閉症やアスペルガー症候群、広汎性発達障がい、学習障害、ADHDなどの脳機能の障がいで、比較的低年齢で発現し小学校低学年において診断される場合が多いです。発達障がいの特徴は、知的な発達に遅れはないが、学習面、行動面で著しい困難を示すもので、小中学校での発達障がいの疑いのある子どもは6.5%という統計結果が出ています。

小中学校においては、発達障がいの疑いのある子どもを特別支援学級で教育、支援する体制を整えています。臨床心理士は、子どもの発達障がいの診断に大きく関わっています。臨床心理士としての取組みは子どもの発達上の特性や障がいや認知の特性、学習面の特性を把握してそれぞれの子どもの特徴を捉えて、関わり方や言葉がけなどの指導、支援の方法を変えていきます。

臨床心理士が発達障がいについての知識や発達障がいの子どもへの支援におけるノウハウに熟知して対応にあたりますが、発達障がいの診断にあたる際に重要なこととして、次のようなことを言われます。「家族や学校がどれだけ早く子どもの状態の変化に気づいて相談されるかが大切で、子どもへの支援の効果が大きい。」ということです。ここでも早期発見ということが重要になります。

子どもの心の問題や障がいを診断する臨床心理士・まとめ

このように、子どもの心の問題に迫る臨床心理士の責任は大きく、子どもの将来を左右する役割を果たしていきます。精神的に不安定な子どもや発達障がいの子どもは、大人の支援を求めています。その思いに対して、臨床心理士として子ども当人や周りの大人に関わっていくことになります。