子どもに対する虐待が社会問題になって、連日のように大きく取り上げられています。子どもの悲痛な訴えはなかなか家庭外に届かず悲惨な結果になってしまうケースもあります。一方で虐待の中でも、学校や地域の周りの大人に見えにくいのが心理的虐待です。ここでは、心理的虐待の実態とその特徴をご紹介します。
目次
心理的虐待をはじめとする子どもへの虐待とは
体への虐待についての周囲の大人の気づきは、比較的容易です。保育園や学校での身体測定などの時に学校が気づく場合や子どもを虐待することで泣き叫ぶ子どもの声に周辺住民が警察等に報告するという場合が多いです。しかし、虐待の特徴は、暴力によって体に傷を負わせるものだけではありません。心に傷を負わせる虐待もあり心理的虐待と呼ばれます。
親は子どもにしつけをします。しつけは将来的に自分の力で生きていくために我が子に対して行うものですが、それが暴力(身体的、精神的)によるものであってはなりません。暴力によるしつけはほとんど意味をなさず、子どもが大人になっても自立できないという事態になります。次のような事例があります。
・虐待を受けた人の言うことは聞くがそれ以外の人の言うことは聞かない
・虐待によって他の人(子ども)に対して暴力を振るうようになる
子どもへの心理的虐待の現状と特徴
子どもへの心理的虐待は、子どもの親権者である父母が行うことがほとんどで捉え方によると身体的虐待以上に残酷だといえます。冒頭でも述べましたが、心理的虐待は「見えにくい」「わかりにくい」ものです。子どもが心理的虐待を受けているというサインを見つけるのは難しいのが特徴です。しかし、誰かがそれに気づいてやらないとその子どもは正常な成長ができないことになってしまいます。心理的虐待にはどんな種類があるかをご紹介します。
・暴言を言うこと
最近では、若いお母さんが幼児である我が子に対して「おまえ」という言葉を使うことをよく耳にします。その子どもが「おまえ」と友だちに言っていることもよく聞きます。「おまえ」という言葉がいいか、悪いかは別にして「おまえ、今度そんなことしたら許さないぞ。」「おまえ、警察に言うぞ。」「おまえお父さんに言うからな。」という言葉を母親が言っているとしたらどうでしょう。一種の脅しです。このような言葉を毎日投げかけられたら、子どもは自尊心が傷つけられます。これが心理的虐待(の恐れ)の特徴です。言葉がエスカレートしていくと「おまえなんか生まれてこなければよかった。」「おまえ言うことを聞かなかったらご飯を食べさせないぞ。」となり、脅しがピークに達して子どもに怯えの症状が出てきます。チック症状になって表れたり、皮膚が荒れたりします。
・無視すること
「子どもを無視する」親がいます。子どもに対してあってはならないことですが、親が我が子を無視するという心理的虐待もあります。子どもが「あのね、おなかがすいたよ。」「きょうは〇〇ちゃんとあそびたいな。」などと訴えてもそのことを無視するという心理的虐待です、ひどい場合には、赤ちゃんが大声で泣いておむつやミルクを母親に要求しても無視をするというケースもあります。このようなことが継続することが心理的虐待の特徴です。
・兄弟の差別
信じられないことですが、「我が子である兄は可愛くて仕方ないが、同じ我が子でも弟は憎たらしい思いでいっぱいだ」という親がいます。「お兄ちゃんは勉強もできて素晴らしいのに、お前は全然だめだね。」「そんなことばかりして。お兄ちゃんをしっかりと見習いなさい。」といつも兄弟の一方を極端にけなす発言や態度をとる場合もそれが継続すれば心理的虐待の特徴ということになります。再婚などによる義兄弟の場合に多く見られます。
・夫婦間のDVが子どもに与える影響
「子どもの前では夫婦げんかはやめましょう。」「子どもの前で夫婦それぞれの悪口を言わないようにしましょう。」ということは、子どもの心への影響を考えて言われていることですが、それがDVという状況になると子どもに与える心理的影響がかなり大きくなり、心理的虐待になります。父親が母親をなぐる場面を目の当たりに見る子どもの気持ちは計り知れず、大きな精神的ショックを受けるのが特徴です。
心理的虐待を受けた子どもが受ける影響
心理的虐待を受けた子どもは精神的に非常に大きな打撃を受けます。それは、虐待を受けた相手が自分の親だということが大きいです。親は自分を守ってくれるものと信じて生まれてくるのが人間の本能ですから当然のことと言えます。心理的虐待を受けた子どもは一般的に想像できないほどの精神的ショックを受けます。子どもが受ける心理的虐待の特徴には次のようなことがあります。
特徴1:心理的虐待が子どもの体に与える影響
大人でもそうですが、精神的にしんどい時には食欲がなく元気がなくなります。心理的虐待を受けた子どもも同様で、虐待が続くとすぐに症状に現れます。「食欲がない」「元気がない」「チック症状が現れる」などの症状です、それによって栄養不足による体重減、ストレスを受けやすくなる、発達障がいにつながるなど、子どもの成長に与える影響は大きいです。
特徴2:自尊感情(自分のよさ)を持つことができない
心理的虐待を受けて育った子どもは「自分はダメな人間」として育てられていますから、自尊感情を持つことができません。それによって自信をなくし、極端な場合「生きている価値を見出せない」と思うようになってしまいます。また、友だちなど、関わる人とのコミュニケーションにも不安を持ち、社会生活を正常に行うことができないことになります。
子どもの心理的虐待の実態とその特徴・まとめ
虐待の中でも心理的虐待は子どもの心に大きな傷を残すものです。現代社会では身体的虐待が社会問題として取り上げられるケースが多いですが、潜在的に心理的虐待もかなり多いです。心理的虐待による自殺や家庭崩壊につながるようなことも予想されます。気づきにくいという特徴のある心理的虐待だからこそ、子どもの周りの大人が気づいたら早期に対応できるようにしなければなりません。