子どもの心理状況は、社会情勢の急激な変化とともに年々敏感になっています。不登校やいじめの問題が低年齢化し、家庭内における虐待の問題も多くなってきています。その度にカウンセラーや児童相談所の職員が対応していますが、解決の難しい案件が多く、今後ますます子どもの心理に寄り添う仕事の需要が多くなっていくことでしょう。
目次
1.子ども心理を生かして仕事をする
子どもの心理状況は、家庭や学校、地域において、その環境や対人関係によって敏感に変わります。学校や病院関係、福祉の仕事について子どもに関わっておられる方は、子ども心理についてある程度は学んでおられますが、一つ一つの問題について専門的に学んでカウンセリングをする仕事に就いておられる方もいます。では、子ども心理を学んで仕事に生かす場合、どんな職種があるのでしょうか。
2.子ども心理に関わる仕事
(1)学校関係
先生です。先生になるためには、教育系の大学などで、教科の専門的な知識やスキルとともに子ども心理などの教職教養も学び教員免許を取得します。そして、各自治体が独自で設定している採用方法をクリアして晴れて先生という仕事に就くことになります。先生の仕事は、激務と言われています。子どもの教育の責任者という自覚を持って仕事をしていくことになります。
先生も子ども心理についてある程度は学んできていますが、カウンセリングなどの専門知識やスキルは十分ではありません。しかし、毎日子どもに接していますから、子どもの心理状態については、親以上にわかっている存在ともいえます。また、子どもの様子に変化が表れたときには、子ども心理を読み解き保護者と共に対応を考えていくことになります。
養護教諭(「保健室の先生」と呼ばれることが多い)も子ども心理に関わる重要な仕事をしていきます。養護教諭は、子どもの健康状態やケガや病気に対応することが主になりますが、子どもが心理的に不安定になったときには、カウンセラーの仕事と同じような対応をします。
特に、小学校高学年から高校生に対しては思春期の悩みの相談に乗ったり、時には保健室登校(いじめや不登校でクラスに入れなくなった子どもが、毎日登校して保健室で過ごす)の対応をしたりする仕事をします。養護教諭は、学校の今の子どもの状態によってはかなり忙しく、担任の先生との連携もしっかりとしなければならない仕事と言えます。
(2)児童相談所
テレビやインターネットで児童虐待死が報じられるたびに、児童相談所の対応がどうだったかと問われています。それほど子どもや親の心理状態の把握が重要で、非常に責任の重い仕事ともいえます。児童相談所で扱っている子どもは乳幼児から18歳までで、子ども自身の問題から、児童虐待など子どもに起こる様々な問題対応に当たります。
児童相談所が対応する子どもは、これから社会に出ていくための人格形成を行う大切な時期ですからこそやりがいのある仕事ともいえます。児童相談所で仕事をしていくためには、大学で専門的な子ども心理の知識やスキルを身に付けて子ども心理の専門家として仕事をします。また、精神力やコミュニケーション能力も仕事をしていく上で必要な資質です。
(3)カウンセラーとしてカルチャースクールや学校での講演活動
子ども心理について専門的に学んで資格取得し、カウンセラーとして仕事に生かしておられる方もいます。自治体が運営するカルチャースクールや学校関係の保護者会などの場で講演活動を行う仕事です。資格については、主催する団体によってさまざまですが、次にご紹介する2つの資格は、子ども心理の専門的な知識やカウンセリングスキルをしっかりと学ぶことができ、取得しておけば仕事をしていく上で信頼される資格です。
・臨床発達心理士・・・子どもの心の発達の臨床に関わる仕事ができる
・チャイルドカウンセラー・・・子ども心理について専門的に学び保護者を支援するしごとができる
3.子ども心理を仕事にする場合の留意点
子ども心理の仕事をしていく上で大切なことは、子ども目線で子どもに接することや保護者と良好な関係を作ることです。心理的に問題を抱える子どもは他者(親であっても)受け入れようとしない傾向にあります。また、保護者も子どものことで非常に敏感になっていますから良好な関係作りが望まれます。
(1)子ども目線で接すること
子ども心理の仕事では、まず、子どもから信頼され何でも話してくれるようにしなければなりません。そのためには、その子どもの年齢に応じて目線を合わせることです。その手法としては、年齢に応じた遊びや話題を取り入れながら対応することが大切です。幼児ならおもちゃを用意して子ども目線で遊ぶこと、中高生相手なら自分自身の過去の友人関係の悩みのことなどの体験談を話してあげることです。
(2)保護者との良好な関係づくり
保護者にとっての望みは、子どもの心理状態が正常に戻りあたたかな家庭生活を送りたいということです。子ども心理を仕事としていく上では、子どもの変容を包み隠さず保護者に話し子どもの情報を共有することが重要です。(親による子ども虐待の場合は除く)ただ、保護者によっては子ども対応(子育て)に自信のない方もおられますのでアドバイスも忘れてはいけません。また、子どもが心を開くようになってきたら子ども、保護者も含めてカウンセリング等をしていきます。
(3)秘密厳守
子ども心理の仕事では、他者に情報を漏らしてはいけません。親による子ども虐待の場合には、子どもが話す情報を親にも話してはいけません。たとえ、幼児が言うことであっても秘密厳守ということになります。
4.子ども心理を学んで仕事に生かす・まとめ
子ども心理を学んで仕事に生かすことは、子どもと保護者のこれからの生活を左右する重要なことに関わることになります。「何が子供をそうさせるのか」ということは、子どもに「どうして?」と聞くことだけでは絶対に解決しません。子どもの心理状態に踏み込んでいく仕事をする場合、結果(家庭・学校生活が子供にとって満足のいくものになること)を出すには長い時間がかかることは常に心しておかなければなりません。